今回は「紅いも」の、いろいろな品種についてです。
「紅いも」という名称にはっきりした定義はありませんが、「沖縄で栽培された、中身が紫のサツマイモのこと」という意味で使われることが多いように思います。ですので、以下、この意味での「紅いも」の品種についてご紹介していきたいと思います。
代表的なものを挙げると、以下のような品種があります。
- ちゅら恋紅
- 沖夢紫(おきゆめむらさき)
- 備瀬
- V4
- 宮農36号
- ハワイ紅
ちゅら恋紅
紅いものなかでも、「ちゅら恋紅」は生産量で圧倒的なシェアを誇っており、主に加工用として栽培されています。
沖縄県でサツマイモの加工というと、ほとんどがペースト加工です。ペースト加工とは、紅いもの皮をむき、蒸したものをペースト状につぶして冷凍する加工になります。
この紅いもペーストが、お土産用のお菓子などに加工されるわけです。
特徴としては、濃い赤みがかった紫の色彩と適度なホクホク感、紅いも独特の風味 といったところでしょうか。
甘みは控えめです。菓子原料としてはこの点は問題ありません(甘味料で調整するから)。
ながいファームでも「ちゅら恋紅」は主力品種として栽培しています。
沖夢紫(おきゆめむらさき)
「沖夢紫」は主に石垣島で栽培され、加工用として流通している品種です。
ながいファームでは、栽培したこともありましたが、いまいち収量が安定しないのと、沖縄本島では加工用として受け入れる業者さんがいないので、現在栽培していません。
石垣島と沖縄本島では400㎞以上離れていますので、石垣島の土壌や気候には合っているのかもしれません。
紫の色乗りもよく、甘さもちゅら恋紅よりはありますが、ホクホクというよりは、ねっとりした感じがします。
このねっとりしているところが、ペースト加工業者さんからすると加工しずらいそうです。
また、比較的甘さもあるので青果用としても少量は流通しています。しかし、青果用の品種としては形が悪いという欠点があったりもします。
備瀬
「備瀬」は、ちゅら恋紅が普及する以前、ペースト原料としても青果用としても5~6年ほど前までは 広く栽培されていましたが、現在では少なくなってしまった品種です。
栽培期間も長く収量も少ないという、栽培しずらい品種です。
皮は白く、中身はうすい紫で、ホクホクして甘みがあります。
少なくはなりましたが、直売所などではまれに見かけることもあります。
V4
「V4」は備瀬と同じ時期に加工用として栽培されていた品種です。
なぜ、備瀬と同じころかというと、備瀬の紫色の薄さを補うために、色の濃いV4を混ぜてペーストを作っていた時期があったからです。
ちょうど、少しねっとりしているので、備瀬のホクホクと混ぜるのは、ペーストの硬さを調整するのにもちょうどよかったそうです。
しかし、残念なことに正直不味いです。ふかしいもを食べてみると、苦さも感じますし、甘さもありません。
収量もちゅら恋紅に比べると若干低かったようです。
宮農36号
実は、この「宮農36号」が紅いもの元祖とも言えます。
現在はちゅら恋紅から、その前は備瀬とV4のブレンドで紅いもペーストは作られていますが、初めて菓子原料としてペーストが作られたのは宮農36号でした。
私も、現物は2、3回ほどしか見たことはありませんし、食べたのは1回しかありませんが、紅いものなかでは食味はよいと評価されています。
しかし、現在では作られなくなってしまった理由は、時期によって紫色の濃さが安定しなかったからのようです。
ハワイ紅
来歴不明、もはや幻となってしまった紅いもです。
噂によるとハワイへ移民した方が沖縄に戻ってくるときに持って帰った、ということですが、真偽のほどは不明です。
備瀬とV4のブレンドでペーストを作っていた時には、加工業者さんによっては備瀬と同じ扱いで出荷を受け入れていたこともあります。
ただし、備瀬と値段は一緒の割には、栽培は備瀬よりも難しいです。
通常、植え付けから収穫までの日数は、ちゅら恋紅は約5か月、備瀬で6か月なのに対して、ハワイ紅は7~8か月ほどかかります。
また、いもの大きさも小ぶりで収量はかなり少ないという、かなり厳しいものです。
味のほうも、おいしいのですが、それはあくまでも紅いもの中での話であって、県外のサツマイモが流通している中では販売価格に反映できるほどの差はなかったと思います。
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